Team Kyosho (ひろさか) 活動レポート


 活動レポート NO−4   
 2007/02/19〜25日 TITC(タイ)レース参加


 TITC DAY−1   02月19日(月)

 朝4時起床、4:30自宅を出発成田へ向う、6時までに東京を通過
 しなければ通勤渋滞で下手をすると1時間以上の長く掛かってしまう。
 7時過ぎ成田に到着、車を駐車場に預け空港へ、今回はどちらへ?
 タイへ行きます。向こうは暑いそうですね? そうみたいですね、でも行っ
 みないと実感はわかないね。なんてしゃべりながら空港に到着、時間が
 早いせいか、空港はガラガラ状態。飛行機もすいていればいいのに。
 ラウンジにて朝食、ここのそばがまた美味しい。小さいのでおかわりもう一杯。
 飛行機に乗り込むとやはりガラガラ状態。一列を独占これは久々に横に
 なって寝ていける、と思いつつそのまま座って寝てしまった。
 
 タイへ到着、荷物を受け取り税関へここの税関は結構うるさいので、事前に
 レースの案内等を用意して置く、案の定税関でストップ、この荷物は何?
 ラジコンのレースがあり、その器材です。ラジコン...? レースの資料を見せ
 ようとしたら、OK! と無事通過。ラッキー!
 
 外に出ると、黒山の人だかり、ニコラス親子が迎えに来てくれている筈だが  
 これでは探せない、うろうろとしていると、次から次とタクシー? と勧誘。NO!
 そこへ電話が...やっと再会、元気そうだね? では直ぐにコースへ行こう。
 もうすでに多くのドライバー達が集まり、調整を開始。わたしはまず車のメカ
 を積んで調整をする。その間自由に走行していて。本格的な走行は明日から
 にしよう。
 
 メカを預かり車に搭載するが、これがまた大変気温が高く、ブラシレスを使用
 する為に、何とファンを合計5個も搭載する。まるでメカのお化けの様だ。
 結構時間がかかった。その間ニコラスは走行を続ける、5、6回は走った
 だろうか? まあまあそんなに焦らずとも明日からは嫌と言うほど走らされる
 から...何だかんだでセットが終わるともうすでに8時、今日はもう終了しよう。
 
 ホテルに行きチェックイン、きょうの夕食は何にしようか? ホテルの向いに簡単
 なタイ料理がある。はい、そこに決定! 夕食をしながら明日からの打ち
 合わせをする。

 明日は、久々の自分で組み立てた車のシェークダウン、上手く走ってくれるか?
 ちょっと不安だが、少し緊張している。明日が楽しみ...今日は早く寝よ!


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 TITC DAY−2   02月20日(火)

 7時起床、(何故か早くめがさめてしまった。)
 8時30分より朝食、そしてコースへ向う。すでに多くのドライバー達が
 集まっている。まずは最初に一度だけニコラスの車を走らせ、その後は
 ニューマシンを煮詰めて行く。彼は2台を比較してやっていくの?...と
 その必要は無い、これからは壊れない限りこちらでやる。但しシャーシは
 一枚しか無いので、壊れたら元の車に戻すよ。(笑)

 最初にニコラスカーを走らせ様子を見る。うん、まあまあかなあ〜?ってところ
 次にいよいよニューカーのシェークダウン、ちょっと緊張する。最初のイメージが
 大切なので、まずはあまり大きな変化が無いように、ほぼニコラスカーと
 セッティングを合わせた。
 
 ゆっくりとスタートさせる、フィーリングがかなり違う為にに最初からあまり
 飛ばさないように! 緊張の一瞬、車が走り出す。見た目非常にスムーズ
 OK、これでいい! 平凡だが全く走行出来ない事は無い。
 軽く1パックを終え、感想は? 凄く車が転がる..非常に軽く感じるとの事、
 うんそれでいい。 ちょっとアンダー気味。しかし今日はリアから始める。
 もっともっとリアをグリップさせたい。
 
 まずはスプリングを順番にテストするが、あまり大きな変化は見られない。
 たぶんタイヤが良くないからだろう。でもいいからこのままテストを続ける、
 サスマウント、Iアーム等色々と組み合わせ、少しづつ変化をさせ良い方向へ
 もって行く、午後になり効果が少しづつ出て、リアのグリップが上がって来た。
 かなりアンダーが強くなって来た。ここでタイヤを新品にしてみよう。

 新品のタイヤで走行開始、1周目インフィールドで突然左曲がりでスピン!
 あれ、何これ? 右後ろが全くグリップしない。たぶんタイヤのはづれだろう。
 他の新品を用意しよう。でももったいないので、タイヤのポジションを変えて
 もう一回トライしてみよう。フロントのものをリアに付け、グリップの悪いタイヤを
 右前にセットする。(コースは右周りの為)これで走行すると、何事も無かった
 かの様にグリップする。よしこれでテスト続行。

 車の感じは良くなって来たが、タイムは今ひとつ上がらない。じゃそろそろ
 フロントに入ろうか? まずは基本通り、フロントのスプリングを硬くする。
 途端に約0.5秒程のタイムアップ、あまり笑わないニコラスがにっこりして
 操縦台より降りてくる。どお? すごく良くなりました。でもフィーリングか...
 それは明日にしよう。明日はフロントを中心にセットをする。車の全体的な
 感じはかなり良くなって来たので、これからはフィーリングの領域に入って行く
 今日はかなりの回数走った為、少し疲れが見えて来た。まだ先は長い、
 あまり無理をしないで今日の所は終了。ゆっくりと休養を取ろう。

 夕食を取りながら今日の復習。明日はもっとタイムアップ出来ますか?
 さあ?それはニコラス次第。私の予想ではもうコンマ5秒位は上がると思う。
 でもトップ選手達はもうすでにその位のタイムで走行している。そしてこれから
 もっとラップを上げてくるだろう。あまりまわりを気にせずに自分のベストを尽くせば
 良い。結果は後から付いてくるよ。
 
 たぶん明日が勝負どころになると思う。レースが近づくとドライバーも増え、
 テストが難しくなる。明日もがんばろう!


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 TITC DAY−3   02月21日(水)

 7時45分より朝食を済ませコースヘ。ニコラスの希望で少し早くコースへ
 行きたいとの事。今日は早く殆どまだ人がいない。
 私はまずは車のメンテ、いきなり車をバラバラにする、ニコラスはちょっと
 びっくりしたようだ。何するの? って感じ、昨日はかなり走りこんだ、
 どこが壊れているか、バラさないと分からないよ。不安げに見つめる。
 大丈夫1時間もあれば組み上がる。その間にタイヤの用意でもしていな。

 今日は車をもっと曲げる様にしよう。スプリング、スタビ、サスマウント等
 少しずつ変化させて様子を見るが、一向にアンダーが治まらない。
 練習は1時間でストックと30分交代となる為に、1時間に1回しか走行
 出来ない。これではらちがあかない。しょうがないのでちょっと荒療治に出る。

 こうなれば考えられる限りのフロントグリップにセットする。ダンパー、
 スタビ、Iアーム、サスマウント位置全てを最大に曲がるセットにする。
 逆方向から攻める作戦。たぶん曲がり過ぎて操縦出来ないかも知れない。
 十分に気を付ける様に! といった途端、コーナーでハーフスピン。
 OK、OKこれで曲がる事は分かった。次はここから戻して行けば良い。
 この方が早くセット出来る。今日はもうあと残り回数も少ない。
 気持ち良く終わらせたい。ニコラスももう一週間近くもいて、少し疲れが
 見え始めた。気分良くしてあげないと...

 次は、前のセットの半分位までもどす。これでかなり良い状態となる筈。
 今日はもうあと二回、走行させると見違えるように良く走る。気温も下がり
 路面グリップも上がり、ラップタイムもかなり良い。どうだった? かなり良くなった
 あと少し曲がる様になればいい。じゃ最後は今日のまとめでもう少し曲げて
 見よう、ダンパー位置、Iアーム位置を変更、たぶん今の所はこれがベストだと
 思う。

 走行開始、私のとなりでタイムを測っていた親父さんが、びっくりして私の時計
 を見る、昨日のベストよりコンマ3秒ほど速い、しかもそのラップを続けている。
 親父さんが喜んでラップタイムを告げる。 うるさい!言わなくて彼は分かって
 いるよ。 走行後少しにっこりとして操縦台を降りてきた彼は、いい感じです。
 相変わらずのポーカーフェイス、ぬか喜びしないところが良い。

 今日の所はこんなもんでいいだろう。私の勘違いで明日もう一日練習がある。
 今日でほぼベースが出来たので、明日はもっと細かい所を詰めてみよう。

 路面の状態の良い所では誰でも速く走る、問題は日中の路面温度が高い
 時に上手く走れなければならない。これが非常に難しい。

 今日は、何を食べようかな? 毎日海老を食べている、ここにいる間にメニュー
 のすべての海老を食べてやろう。


  非常に綺麗なコース


  早速メンテにとりかかる。ニコラスは? ゲーム???


  操縦は、真剣そのもの。


  調子は? まあまあですね〜。




  ストレートで突然タイヤが破裂、びっくりした!



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 TITC DAY−4   02月22日(木)

 今日も7時45分朝食そしてコースへ、コースまではタクシーを利用する。
 タクシーがまた飛ばす事、高速道路でもないのに120kmも出して走る。
 中国で少しは慣れて来た私でもまた違ったスリルを感じる。
 急いでないのにそんなに飛ばさなくても良いのに...
 無事コースにつくとほっとする。
 
 例によって整備より始める、今日はダンパー等少し細かい部分のセットをする。
 多くの車が走行し少し路面変化してきた様に感じる。またタイヤのノウハウが
 乏しい為に走行毎に状態が変化するのが難しい。
 まだまだ勉強不足。またタイヤも非常に高く、新品で走行させようとすると
 多くの費用がかかる。マニアの人達の苦悩が分かる。
 
 今回は、お金の有難さが分かるように会計はすべてニコラスに任せている。
 私はタイのお金は日本円の¥1000位しか持っていない。
 飲み物、食べ物すべて彼にねだるようにしている。

 お互いに言葉では完全にコミュニケーションは取れない為に、表情、しぐさで
 分かり合わなくてならず、難しい部分も多くあるがかえってこの方が良いのかも
 知れない。

 今日は一進一退であまり大きな進展は無かったが、まあこんなものだろう。
 明日は、練習2回とコントロールが2回ある。ここでまとめをしなくてはならない。
 あまり周囲を意識はしていないが、決して遅くは無い。レースは開けてみないと
 分からない。でも今の我々は装備、サポート等すべてマニアレベルである。
 これでどこまで戦えるのか? ある意味楽しみ...


 私は車を、ニコラスはタイヤを...だいぶ上手くなったね! でもまだまだ。




 Iアームの位置を変えると、この様にキャンバーが変化するの。
 ふーん...??





 今の速かったよ! えっ、そうですか?




 ここはどこ?  私は知らない。




 操縦台は黒山の人だかり、何台走っているのかな?




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 TITC DAY−5   02月23日(金)

 いよいよ今日からレースが始まる。今日はフリーが2回、そしてコントロールが
 2回ある。昨日の最終はあまり良くなかったが、タイヤが原因かも知れない為
 にもう一度同じセットで一回走行する。例によって整備を終え準備をしていると
 ニコラス君、ちょっとキャンバーを測っていいですか? なんで? ちょっと確かめ
 たいです...。失礼なやつ。 でも本人が心配しているのだからまあいっか。
 
 彼は私がゲージを使わない理由を知らない。説明をするのは難しいので彼の
 希望通りに測らせてやった。良く見ると左右僅かに狂っている。彼の気が済む
 様に左右ピッタリと合わせた。でも私は気にいらないので、彼の居ない所で
 再度私流に直した。
 いづれ彼も私がゲージに頼らない理由を理解するだろう。

 一回目の練習、昨日よりは少し良くなったがあまり良い状態では無い。
 ラーップタイムも良くない。少し他車のとの接触があった。彼は殆ど自分では
 ミスをしない。車を壊さないので非常に助かる。ただちょっと走りは物足りない。
 他車との接触があり、少しクラッシュをした。一回目を終了すると、どうも車が
 真っ直ぐ走らなくなった。点検して下さい。
 
 フロントサスピンが曲がったのではないですか? なんでそんな事分かるの? 
 すぐに点検、でも全く異常なし。しか〜し、ピンポ〜ン! リアのサスピンが
 見事に曲がっていた。当たらずとも遠からず。 えら〜い!

 2回目、今度はボディを変えてみたいとのリクエスト。いいよ好きな事やれば
 良い。結果は操縦が非常に楽になった。しかしタイムはいまひとつ伸びない。

 いよいよコントロール、これで組み合わせが決まる為、失敗は許されない。
 ただ2回あるので、時間的にもあとの方が良いのに決まっている。
 まずは最下位メイン等にならない様にある程度のポジションを確保する様に。

 勿論、予選のつもりで走れ。練習では少し遠慮気味なので思い切って行け!
 ラップはあまり速くないが結構安定して走っている。これはまずまずのところへ
 行くだろう。  結果は総合14位と上出来だった。

 さあ、これからが本番、当然皆2回目はもっとタイムを上げてくるだろう。
 気温も下がりグリップも上がる。このままのタイムではかなり順位を下げるだろう。
 さあ、どうする??  今まで随分色々な事をやって来た。ニコラスなら
 どうすれば良いと思う?

 路面のグリップが上がれば、もう少しリアを硬くして、またフロントもダンパーを
 一つ立てる。そして14回目にやった事...14回目? 何それ?
 アッカーマンを元に戻して下さい。 へえ〜そんな事覚えているの?
 彼はメモ等は一切取っていない。私も今回は何もメモらず、頭の中に叩き込む
 様にした。しかし回数までは記憶に無い。

 OK! すべて的を得ている。私の考えとほぼ同じだ。ただこれはかなり危険な
 セットだ、路面のグリップが上がれば良いがもし上がらなければ非常に危険。
 どうする? やってみます。 OK! 幸運を祈る。

 前のヒートをみていると、思った程グリップが上がっていない様に見えた。
 ニコラスに差ほどグリップは良くない様だ、気を付けて少し様子を見るように。
 了解!

 すみません。スタート前に少し蛇角を調整して、そしてスタート位置は
 出来るだけアウト側に置いて下さい。 おお、一人前の事を言う。

 4番スタート、車がかなり敏感に感じる、大丈夫かな? と思っていると
 どんどんスピードアップ、これは調子良さそう...今までに無いラップを刻む
 これは相当気合が入っている。思わず私も興奮した。この様な状態は非常に
 危険でだいたいミスをするのが普通である。しかし彼はミスをしない、周回
 遅れもヒヤっとするような抜き方をしていく。初めて彼の本気の走りを見た様に
 思えた。殆どノーミスでレースを終了。今回はじめて20周をクリアー。 

 結果は総合12位。上出来だ。勿論トップとはまだまだ大きな差はあるが
 彼の才能の一部を見せてくれた。これからが楽しみだ。

 操縦台から降りてきた彼に20周をクリアーした事を告げると少しにっこりして
 でもすごく操縦が難しかった。そりゃそうだよ、でもこれくらいしなければタイムは
 出せない。今日は良いポジションを確保できたので、まずは良しとしよう。

 明日からはこうはうまく行かないから、また何か手段を考えよう。
 ところで、今日の夕食は?


 朝一番のお決まりの仕事。




車検。大丈夫ですか? 何をいってるの、何年レースやってると思ってんの。




 このボディの横が路面に擦ってんだけどね〜。はあ〜?




 開会式が始まる。




 いよいよコントロールプラクティス開始!




 念願の20周をクリアー。今日の所は合格!




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 TITC DAY−6   02月24日(土)

 さていよいよ今日から今回の仕上げ。予選が始まる。1回目は
 10時過ぎ、時間的には少し遅い、9時までだと路面のグリップも良いが、
 もう 十分に路面温度が上がってしまう。
 どうするニコラス? うーん...どうしたらいいですか?
 昨日の最終はかなりよかったので触らないほうが良いかも、少し難しいかも
 知れないがたぶんコントロールは出来ると思う。

 一回目の予選は大変重要だ、たぶんタイム的には後の方が良いと思うが、
 レースの進行上はとても重要だ。
 1Rは2番スタート、後続にはトップドライバー達が追ってくる。走りが少し
 硬い、ラップタイムも今ひとつ、やはり少しドライブはむつかしい様だ。
 ちょっと選択を誤ったかな?

 しかし何とかうまくごまかしドライブをしている。タイム的にもそう悪くはない、
 このままゴールすれば19周2秒位と思った最終ラップ...あっ、やった! 
 左コーナーでクラッシュ。ダンパーがはずれ惜しくもリタイア。
 順位は見るまでも無い。

 スタンドを降りてきたニコラスは、すみません! ちょっと緊張してミスをして
 しまいました。大丈夫、レースはこれから、余計にプレッシャーが掛かるだけだよ。(笑)

 ところで次はどううする? 路面のグリップも少し落ちると思います。
 それでリアスプリングを一つ柔らかくしてオイルを少し硬くするというのは
 どうですか?

 スプリングのソフトは賛成だが、ダンパーオイルは良くないと思う、レース中に
 ダンパーオイルを交換するのは非常に危険。ダンパーオイルは交換した時と
 2回目では随分硬さが変わってしまう。もし交換するのなら、毎回メンテを
 しなくてはならない。しかし全く同じ状態にするのは、私には自信が無い。
 これまでオイルは殆ど触っていない。オイルは2回目以後は少し柔らかくなり
 後は殆ど変化しない為に安全だ。ではスプリングだけにしよう。

 2回目はたぶん気温も上がりタイムは出にくいだろう。次の為のテストとしよう。
 まずはリラックスをして最低限のポジションを確保しよう。

 レースがスタート今度は前回の様な硬さは無い、ラップタイムもこの時間に
 しては良い、これは良いぞ。ノーミスでレースを終了。記録は19周01秒。
 総合15番手とまずまずの出足。

 車の調子は良かったです。じゃ次もこのままのセットで行こう。ただ少しモーター
 のパワーが落ちて来たみたいなので点検をしてもらおう。そしてバッテリーも
 少しパワーを上げよう。次の目標はまず20周をクリアーする事。
 
 私の指示は、まずタイヤの削りが上手く無い為にスタート前に一周してタイヤの
 アタリを取る事、そして前半はパワーを掛け過ぎずタイヤを温存する事。
 多くの選手は後半にラップタイムを落としてしまう。これはタイヤの消耗(過熱)
 とバッテリーの所為だと思う。今回は出来るだけ前半にパワーが出なくて後半
 でもパワーを維持出来るものを選んだ。モーターも他のトップドライバー達より
 少しローパワーを選んでいる。もう少し速いものもあるのだが、彼はコントロール
 が難しくミスを起こしやすいと言う事であえてローパワーを選んだ。このあたりは
 只者ではない。

 第3ラウンド、路面状況は前回と殆ど変わらないと思えたが一段と速いラップ
 で走行する。うんこれは20周ペース、いいぞ! 走行も全く危なげない。
 私の指示とおり中盤からラップを上げて来る。前半に引き離された選手達に
 追いついて行く。これは非常に大切な事だ。前半が早く後半の遅い場合は、
 それだけ何かの変化が大きい為に、操縦感覚も狂いミスをしやすい。

 予定通り?20周をマーク、順位を少し上げ13位に浮上。ここまでは良い
 展開。さあいよいよ今日の勝負ところ、最終ラウンド。
 気温が下がるこのヒート、勿論皆タイムを上げてくるだろう。もしここでタイム
 アップ出来なければ、Bメインはおろか下手をするとCメインとなるだろう。

 考えられるセットは2者択一、リアスプリングのハードかソフト、これは非常に
 難しい選択だ。当然今の我々のレベルではトップを狙える状態では無い。
 だたどこまで迫れるか?と言う事だ。私は安全策と取ってそのままのソフトを
 勧めた。

 最終ラウンドの前のヒートをみて、私は選択を誤った事に気づいた。昨日より
 約30分時間が遅い。路面グリップが非常に良い。しかしもう時すでに遅し。
 ニコラスにたぶん少しアンダーになるよ。わかりました! 全力を尽くします。
 トップスタートのアンディ・モア選手が脅威的なスピードでラップを重ねる。
 しかしニコラスも動揺しない。自己ベストのラップで淡々と周回を重ねる。
 かなり早いタイムで19周を通過、これは良い記録、何と8秒の記録。
 
 これは素晴らしい。勿論路面が良くなり多くの選手が良い記録を出すのだが
 反面ここで気負いすぎて失敗をする選手が非常に多い。事実今回でも
 多くの選手が最終ラウンドで失敗して、順位を落としてしまった。

 今日は結果的には13位で終わったが、ニコラスは完璧な”レース”をした。
 並み居るトップドライバー達と互角に戦ったと思う。本人はAメインに入れ
 無かった事に少し不満を持っている様だが、これから先は今の我々の装備
 では無理、自分の周りを良く見なさい。このメンバーの中に入れた事だけでも
 私は90点以上の評価をする。

 今回は悪いけれど、貧弱な装備でノウハウとガッツだけで戦ったのだよ。
 勿論、まだレースは終わっていない。明日はどうなるか?は分からない。
 今日は早く寝て、明日の作戦を考える様に! 分かった? ハイ!


 もうプロなんだから、しっかりとスポンサーデカールを貼りなさい。




 私が緊張してどうするの?




 昼食は、私はカレーライス、ニコラスは天丼、来月は日本へ行くので
 日本食に慣れないと...(これは口実、笑)





 うちのドライバーはうるさいから、早くスタート位置を確保。




 見覚えのあるボディカラーが一杯。今度はもう少しカッコいい塗装にしようね!




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 TITC DAY−7   02月25日(日)

 さてさて今日は最終日。予選一回と決勝。ニコラス君作戦は?? 
 たぶん今日の予選はタイムを更新するのは難しいを思います。
 またもしAメインに入ったとしても現状の自分ではとても付いて行けない。
 それよりも、まだ自分より速く走るベテラン選手達で競り合える可能性が
 ある選手達と一緒に走行出来る方が勉強になる。
 自分は殆どこの様なトップドライバー達と一緒に走った事が無い。
 競り合い等は非常に下手だし、もっと経験を積みたい。

 それと最も重要なのは、Bメインではタイヤを新しく購入出来無い。
 その為にあと1セットしかないので、これを決勝レースにキープしたい。

 うーん...それは的を得ている。了解! では最後の予選は決勝の
 プラクティスとしよう。

 ひとつお願いが...何? アッカーマンをもう少しだけ強くして下さい。
 もうほんのちょっとだけ曲げたい。
 OK了解!

 かくして予選最終ラウンド、みんなかなり熱くなっているので、要注意! 
 分かってます。
 スタート、やはり各選手ラップが上がらない、勿論ニコラスもラップは遅い。
 彼の読みは当たった。

 A,Bメインともに記録を更新した選手は殆どいなく、昨日のオーダーで
 決勝へ。

 決勝はBメインは2回行われる。ここで少しハプニング。Bメインの選手は
 追加でタイヤを購入出来るとのアナウンス。
 何、これは話しがちがうぞ! このあたりはローカルレース?

 ニコラスは、3番スタート、前には前住、スリカーン選手、後ろには北澤選手
 加藤選手達の強豪達が控えている。いづれも昨日にはAメインの中盤にいた
 選手達だ、この中でどのようなレースを見せてくれるか?楽しみだ。

 決勝Bメイン1ラウンドがスタート、きれいなスタートをきるがリアがグリップ
 しない。また外れタイヤか? まだタイヤの見極めが上手くできない。
 しかし何とか押さえて走行させるが、かなり苦しそう。先頭集団から少し
 づつ引き離され、後続に追いまくられる。しかしリアが滑りながらも何とか
 コントロールをするが、後続車に接触され転倒...最下位まで順位を落とす。

 ああ...まあこんなものかな? 普通ならここで切れてしまう。しかし彼は
 諦めない。果敢に攻める、そして他車のミスもあり結果は5位に終わった。

 どんな顔をして操縦台を降りてくるか? 何と言おうかな? と考えていると
 彼は、相変わらずのポーカーフェースで、一言、タイヤが悪かったみたいですね?
 終わり...

 さあ、次はもう泣いても笑ってもあと一回、今回の締めくくりの最終レース。
 今回の仕上げだ。レースに作戦等成立たないが、一応状況を把握しておく
 様に。
 
 このメンバーの中ではベストラップは一番遅い。しかし3分過ぎれば、一番
 速く走れる筈だ、スタートでは絶対に無理をしないで順位をキープ。
 展開を考えると必ず後ろから追いつかれる。しかし絶対にコースは空けるな、
 レースなのだから遠慮はいらない。3分間頑張れば必ず後続は後退する。
 そしてたぶん4分過ぎれば、ストレートエンドで他車をパス出来るだけの
 スピード差はある筈だ。第一コーナーは直線でインに入っていれば、パス出来る
 問題は次の左コーナーだが、ここはニコラスは抜群に上手い。多くの選手は
 このパイロンを踏めないが、ニコラスはパイロンを半分乗っても大丈夫。
 綺麗にジャンプをしていく、これは車のセットにもある。他車に比べてかなりの
 ソフトセットである。又その為ににタイヤの負担も少なく、モーターにも殆ど
 負担が掛かっていない。多くの選手が熱に悩まされる中、我々は全く問題が
 無く、当初5個付けたファンの最終的には3個に減らせた。
 それでも温度は同じモーターを使用している選手よりうんと低い。
 全く心配は無い。

 Aメインの前の前座レースだが、多くの人達が注目している。ニコラスの応援団
 も出来た。
 
 綺麗なスタート! まず第一段階はパス、全車にピッタリと喰らい着いていく。
 しかも追いついて行く。これはちょっと意外な展開、前住、スリカーン選手、
 と互角に渡り合っている。この3車が抜け出し隊列を作る、スリカーン選手が
 前住選手にアタックを掛ける、ニコラスも負けていない、3車の競り合いの前半
 スリカーンが第1コーナーでクラッシュし戦線離脱、今度はニコラスが前住選手
 を追いまくる、トップスピードは明らかに速い、果敢に攻めるがベテランをそう
 簡単にパスする事は出来ない。そのうちに今度は北澤選手が猛烈な勢いで
 迫ってくる、必至で押さえるがついに接触クラッシュ、北澤選手がコースを譲り
 順位変わらずレース続行、よく立ち直った。この間前住選手は独走態勢。
 これからはニコラスタイム、あれだけ勢いよく迫って来た、北澤選手が逆に
 離されて行く。もう後続は誰も追って来ない。前住選手はもうクルージング
 状態だ。しかしニコラスは果敢に攻めた。追いつ着かない事が分かっていても
 守りに入らず自己ベストに近いラップで走行続け、このままでは追いつくのでは
 無いかと思わせる程、周回毎に距離を詰めていった。

 勿論、結果は2位ゴールであったが、最後のレースでこれだけの走りを見た
 ニコラスに多くの人達が称賛し、私におめでとうと言ってくれた事に素直に
 感動出来た。勿論、ニコラスも十分に満足したし、Aメインに入れなかった事
 に少し不満を持っていた、親父さんも少し涙ぐんでいた。

 勿論、レース全体から見れば、たかが2軍の戦いだったかも知れないが、将来
 に何か予感を与えるに十分なパフォーマンスだっと思う。勿論、私も彼を選択
 した事に確信を持ち、リーディ氏の選眼の確かさを改めて感心した。
 彼を本当の一流ドライバーで出来なければ、私はマネージャーとしては失格
 だと感じた。 

 レースが終わり、私は早く帰らなければならず、私達は表彰式の途中で会場
 を抜け、一時ホテルへ...

 タクシーの中、ところでニコラス結果的に順位は? 知らない、たぶん3位では
 無いかと思うけど...
 決勝の2回は、どんな採点方法なの? 知らない...
 おいおい、皆そんな事も知らないでレースやってたのか? と大笑い。

 次は、3月は日本でテスト、4月はドイツのLRPレース、そして5月には
 アメリカでリーディーレース、ここではリーディ叔父さんに成長ぶりを見せられる
 様に頑張ろう。体調が思わしくないリーディさんの一番のお見舞いになると
 思うよ。

 ではまた See you soon!

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 ニコラスとは短い一週間だったが、終わりの頃には、もう何年も一緒にやっている
 様に打ち解け、言葉の障害等も全く問題が無くなった。レース中常に何故か
 正美と勘違いしてしまう様な感覚を覚えた。これも非常に彼の性格が正美に
 似ている事もあるからだろう。

 レース中は一切他の事は考えない。
 口数が非常に少ない。無駄話はしない。
 レース以外の事は無頓着だが、事レースの事になると非常に神経質で
 細かい事を気にする。
 人懐っこく何食わぬ顔で色々と情報を集めてくる。
 コースにいてても殆ど存在感が無い。
 常にクールでレース毎に一喜一憂しない。
 私の事を凄く思いやってくれる。これは気を使っているのでは無く、私を
 うまく使わないと自分が良くなれない事を感じている。
 物凄い集中力を持っている。

 等などに共通点を感じる。

 特に彼は記憶力が鋭い、セッティング等すべて覚えている。私は記憶力には
 自信が無いので、彼をメモ代わりに使っている。
 ダンパースプリングは? はい、Fが15−4、R14−5.5です。
 キャンバーは? F 1−1、R 0−2 です。
 アッカーマンは? ポールが−1、アーム+−1 ですてな調子。


 今回は、初レースでもありあまり多くの期待はしていなかったが、予想以上に
 多くの収穫があり、私自信も多くの勉強になった。またやはり自分に取っても
 一番合っている仕事だと自覚が出来た。

 レースは心身共に本当に厳しいが、もう一度あの大きな感動を感じてみたい。



 今回の最大のエピソード

 予選最終ラウンド前、私がバッテリーを積み最終調整をしていると、ニコラスが
 真顔で、40秒前! へっ? 40秒前! 何、何の事? レース40秒前!
 それって冗談のつもり? はい!(笑)、お前ねえ〜それって可笑しくも何とも
 ないよ! そうですか? (大笑い) 初めて言った冗談だった。  


 このメンバーでスタート位置を確保するのは、大変なんだよ!




 ベテランに囲まれちょっと緊張気味。




 後ろのピットはヒデローさん。半田コテ借りて面倒かけました。




 最後の決勝スタート。




 やっと、笑顔が...




 SUDAさんのインタビューを。




 TEAM KYOSHO これからもよろしく!