Team Kyosho (ひろさか) 活動レポート


 活動レポート NO−9

 2007/07/13〜17  シンンガポールにて練習&テスト

 7月13日(金)
 今回はニコラスは学業に忙しく、海外遠征は難しい為に私がシンガポールへ
 出向き、練習及びテストをする事とした。今回は期間も短く又先日の失敗も
 ある為に、もう一度基本練習をしっかりとする事に決めた。

 香港での仕事を終え、夕方にシンガポールに着き夕食をしながら明日からの
 プランを打ち合わせ、今日はそのままホテルで休息。

 7月14日(土)
 9時ホテルを出発コースへ向う。今日は土曜日の為かなり多くの人が走行する
 事が予想される。今日はセッティング等は殆どせずに、走行練習を主にする。
 今までのレースを見ていると、大事な所で小さなミスをする事が多くある、これは
 基本の操縦技術が未熟な事が原因と考えられる。コースを走行させると
 それなりに上手く走らせられるが、何かが少し変化すると対処が出来なくなる事
 も多くある。これは多くのドライバーに見られる傾向だ。直線を真っ直ぐ走る、
 ピンポントで狙った所へ車を持っていける。ステアリングを細かく切る...等
 まずはこの基本操作がどの程度上手く出来るか?をテストする事に...

 まずは、手始めにコーナーを正確に狙う為に、パイロンを50cm位の間隔に
 2つ置きその間を通る様に走行させる。これは簡単にクリアーする。殆ど普段と
 同じ感覚で走行すれば良い。オーバーランをしなければ問題ない。これは
 40cm位の幅でも走行させる事が出来る。

 次はコーナーの内側から1m位外にパイロンを置き、その外側を通過する。
 これはコーナーの大きさが変わり、当然走行ラインが変わり、また次のコーナー
 への進入も変わってしまう。コーナーでの対応は早く、2、3周回ればほぼライン
 を決める事が出来る。
 このあたりはまだまだ初級、次はニコラスの苦手な先を見る練習。
 
 通常はストレートの終わりに緩やかなカーブで外周を回るが、これを少し変更
 して、コーナーの手前でショートカットしてそして外周へ出るコースに変更。
 勿論他の選手も走行している為にコースを変更するのではなく。ガードを少し
 ずらせて1m位の入り口を作り、直線からその隙間を通り、また50cm位の
 隙間からコーナーへ出る。これは最高速から急減速して斜めに1m位の隙間を
 狙わなければならず、直線の半分あたりでは先の入り口を見ていなければ、
 隙間を通る事は出来ない。減速のタイミング、ライン、ステリングの微調整等
 非常に高度なテクニックを必要とする。

 まずは、ゆっくりで良いから走行を始める。止まる様なスピードでもパイロンに
 乗り上げてしまう。
 1パック一度も完全に通過出来なかった。ニコラスは難しいです! そう、それが
 君の一番の弱点なんだ。コースに沿って走る事は比較的簡単だが、ここでは
 直線を斜めに走らないとダメで、また先が見えていないとコーナーを狙う事が
 出来ない。自分の車だけを見ていると、ここは通過出来ないよ。
 今日はこれを徹底的に練習しよう!

 これは入り口から出口まで良く見ると一直線に走行する事が出来る、ただし
 ラインは幅30cm位しかない。操縦台からはたぶんそのラインは見えない為に
 直線で走行させるのは無理だと思うが出来る限り直線に近づける事。その為
 には、車を大きく動かしてはいけない。ステアリングの微調整が必要となる。

 このトレーニングにはニコラスもかなり手こずっているが、彼の目は輝いている。
 なんとかこれをクリアーしようとチャレンジを続ける。少しずつ通過出来る回数が
 増えて来る。しかしスピードが遅い、もっと速く! 

 5、6パック走行させるとかなり確立が上がって来た、進入のラインを色々と変化
 させてそのラインがベストなのか?を見極める事も必要だ。

 走行を続けていると、勿論だんだんと上手くなって来た。しかしこれで上手く
 なったと思ったら大間違いだよ、これは単に慣れてきてタイミングを覚えて来た
 だけの事、この様な練習を常に何度も繰り返して練習すれば、より正確な
 走行をする事が出来る様になるよ。次は試しに進入の位置を少し変えて
 みよう。
 
 今度はガードを少しずらせて5m位手前から進入する。走行させるとまた最初
 の様にミスが多くなる。これはタイミングで覚えているからで、本当に見えている
 のでは無い証拠。まだまだ練習が必要だ。

 明日はまた違った練習法をやってみよう!

 今日は土曜日で人も多い


 この進入が難しい


 上手く通ればほぼ直線に...



 7月15日(日)
 今日も同じく9時出発、朝食を済ませコースへ向う。日曜日は人も少ない
 皆家族サービスに忙しい様だ。しかし数名の人達がすでに走行をしている。
 車のメーカーや車種も様々で皆本当に楽しんでいる様子。日本のサーキット
 の雰囲気とは一味違う印象を受ける。

 こちらは真剣にトレーニングをして、時にはコースを勝手に変えたりするが、皆
 快く容認してくれる。多くのドライバーはいわゆるお楽しみ派ですが、中には
 レース派もいて、ニコラスと同じ様に難コースに挑戦する選手もいるが、殆ど
 走行する事は出来ない。

 さて今日はもう少し難しいコースにチャレンジ、ストレートからの細路はほぼ
 通過出来る様になった。こんどはその続きでシケインを通過する。これは
 かなり幅が狭い為に、前のコーナーを上手くコントロールしなければ、曲がり
 切れない。スピードとラインの練習だ。

 まずはゆっくりとコースを確認するが、いきなりオーバーランして曲りきれない。
 シケインはスピードの問題では無くラインを正確に取らないと曲がれない。
 簡単そうだが結構難しい

 昨日からニコラスの練習車を使用しているが、セッティングは何もしない、
 壊れればその箇所を修理するだけで、出来るかぎり走行させる。昨日は約
 30パック以上の走行。今日はもっと多く走行出来るだろう。ただ車の状態は
 かなり悪い。ニコラスはメンテしないのですか? 時間がもったいないので、メンテ
 はしない、車の状態が良くないのは分かっている、もう各部がガタガタ状態だ
 しかし、状態の悪い車をコントロールする事も良い練習になる。

 15分に一回位の割りで走行させる。午後になるとニコラスも暑さでかなり弱って
 来たのがみえる。ここで休んではダメ、君は体力的にも少し軟弱に見える。
 レースはいつも過酷な状況の中で戦わなければならない。どんどんと走れ!

 遅い! パイロンに乗るな! もっと細かくステアリングを切れ!と激を飛ばす。
 
 回を重ねる毎に上手く走行出来るようになって来た。しかしこれは本当に
 上手くなったと思うな、この様な練習を積み重ねる事で本当に上手くなるのだ。

 難コースもミスも少なく走行出来る様になって来た、次は今日のまとめとして
 自分でコースを好きな様に走行させる。このコースは色々なレイアウトが取れる
 小さな隙間を通れば何通りでもコースが取れる。標準コースも入れながら、
 自分でコースを選び走行させる。ただし2周と同じコースを取ってはいけない。
 また、他の人達も同時に走行をしている。この車を良く見て衝突しない様に
 コースを選ばなくてはいけない。

 これは大変面白い練習だ。的確な判断力、操縦テクニック等多くの要素が
 要求される。
 ニコラスもこの練習法はかなり気に入った様子で、果敢に挑戦している。
 他の選手達もニコラスのドライビングに注目する。このたった2日間だが大きく
 進歩した様に見える。

 今回は期日も短くもう明日一日で終わりの為、明日はニコラスが学校へ行って
 いる間に私が車をすべて整備して、午後から今回の仕上げをする事とした。
 今日はさすがにニコラスもかなり疲れた様子。もう一日がんばろう!

 細路を抜けシケインへ...


 進入を誤ると曲がりきれない。


 ライン取りとスピードが重要。



 7月16日(月)
 今日はもう最終日、午前中に私が車を整備してニコラスが学校から帰って来る
 のを待つ。今日はコースは定休日なのだがオーナーに特別に許可を貰って
 走行が出来る。だれも来ない筈...が何人かは走行させに来ている。

 昨日までの車はもうかなりひどい状態の為、シャーシーをはじめ殆どのパーツを
 取替えて新車の様になった。

 午後2時ニコラスが学校を終えてコースへ、すぐに練習に取り掛かる。今日は
 殆ど人が居ない為に、コースにペットボトルを置き、それに当てる練習をする。
 置く場所は私がその都度変える為に早く場所を見つけそのコースへ車を走行
 させなければならない。ますはストレートのおわりの方へボトルを置く、これに
 当てそして次のコーナーをうまく曲がらなければ行けない。

 6セルモディファイの為スピードは相当速い。まずは大きく外れ...1パック約
 15周する間たったの2回しか当てられない、これでは狙って当てたのではなく、
 まぐれだ。ストレートに入った時にすぐにボトルを確認して、車をその方向に
 持って行かなければダメ! 確認が遅すぎる。そしてスピードを少し落とす事。

 これは非常に難しい、しかしこれが出来なければ、ピンポントでコーナーを狙う
 事等とても出来ない。自分の車から一瞬目を離し先を見てそして微妙な
 コントロールをする練習だ。まずは確実に当てられるスピードまで落とし、それか ら徐々にスピードを上げる様に...これが100%当てられるスピードが君の
 テクニックの限界スピードだと思っても良い。

 車の幅は約200mmボトルの径は7cm位、計270mm位の誤差で走行
 しなければならない。かなりスピードを落としてようやくヒット出来る様になって
 来た、ヒットするまでは同じ場所に置くと次は狙いやすくなる。しかしこれは
 記憶によるもので、実際にボトルを確認しているのでは無い。

 次々と場所を変え走行を続ける、すこしづつ当たる回数が増えて来た。また
 スピードも少し速く走行出来る様になって来たが、ボトルに当てる事ばかりに
 気を取られ、他のコーナーが上手く走行出来ない。ボトルをだんだんとコーナー
 の近くに置く、イン側、アウト側と変化させる。コーナーに近づくと、ストレートから
 ボトル、そして次のコーナーが曲がれるラインとスピードを考えなければいけない。

 この練習にはさすがのニコラスも少し落胆したようだ、これも1日や2日で習得
 出来るものでは無い、練習の積み重ねが必要だ。たぶんマサミなら10回に9回
 はほぼ全開でヒットすると思うよ。ほんとですか? ニコラスも練習すれば必ず
 出来る様になると思う。今回は私のみたところ20〜30%位の成功率だが、
 次回までにせめて50%位になってほしい。

 さてさてもうあまり時間もないので、今回の仕上げとしてまた変形コースの練習
 をしよう。今日は人も少ない為にコースの殆どを狭くして、走行ラインは1m位
 しか無いコースとなった。そしてタイミングを取れない様に毎回違ったコースを取る
 練習だ。

 今回はたった3日間の短い期間だったが、ずいぶんと走りが変わった様に見える
 たぶん次回標準コースを走行させれば、随分と楽に速く走れると思うよ。

 ただコースを走行させるのが練習では無く、この様なのが本当の練習になる。
 今回は車のセッティング等は何もしていないが、普段の様にセッティングを
 しながらコースでタイムを測っているよりうんと進歩したと思う。車のセッティング等
 は違ったコースへ行けばまた違ってしまう、ここでセットを決めたところであまり役に
 立たない。それよりもっともっと操縦技術を向上させる様に心がける事!
 分かった? はい、了解しました。

 これから暫くは、学業の方が大変そうなのでレース参加は出来ないが、次回
 たぶんヨーロッパのレースとなると思うが、この効果が必ず出てくると思うので、
 しっかりと練習をする様にね。 ハイ!

 今回はかなり厳しい事を言ったが、今日ニコラスが走行させていたコースを他の
 ドライバーが走行させたら、たぶん誰もノーミスで走行させる事は出来ないと思う
 よ。これはかなりハイレベルな練習で、普通のドライバーでは絶対に出来ない事
 と思っても良い、試しに次回でも友達にやらせてみては...?

 殆どのパーツを交換


 完成したニコラス車


 ストレートにペットボトル...これでは当たらない!


 コーナーにボトル...このあとのコーナーが問題。






 活動レポート NO−8

 2007/06/17〜25  JMRCA 全日本選手権 予選参加

 6月17日(日)
 ニコラス出向えの為に午後2時に家を出発、成田へ向う。今日は日曜日の
 為、東京の渋滞は無いだろうと思っていたところ関越が事故渋滞。
 まあ、もう3度目の来日の為少し位遅れても待っているだろう。とうきょうにの
 渋滞の事は彼も良く知っている。17:20成田到着、同時刻に彼の飛行機も
 到着グッドタイミング。大きな荷物を持ってニコラス到着。
 これからどうするのですか?
 今日は疲れているだろうから、何もしないでホテルへ直行しお休み。
 ところで今日の夕食は? すかさず、寿司! OK! 回転寿司へ...
 今日は何皿目標ですか? 分かりません。 回転寿司で鳥のから揚げ、
 たこ焼き、変なものばかり食べている。これは寿司ではないよ。デザートに
 クリームパフェ...今回は意外と少なく二人で18皿、こんなもんかな?
 すぐにホテルへチェックイン、明日は、8時半朝食そして10時半出発。OK?

 6月18日(月)
 朝8時30分ロビーにて待つが、ニコラスの姿は無し。部屋へ電話をすると、
 眠そうな声で、もう少し寝かせて下さい。朝食はいいです。OK、では10時半
 に出発。
 10時30分今度は定刻通りに元気な姿で出発。谷田部アリーナに到着、
 今回のモーターサポートをお願いした、関西の田中君と合流。早速準備に
 取り掛かる。

 今回は、ニコラスがリーディレース後持ち帰った、1号車をニコラスが自分で
 セットをして結構良くなったというので、これから走行をして見ようという事に
 した。しかし車を見るとまずここでは全く走らないだろうと一目で分かった。
 でも、これを言うとあまりにも失礼なので、とりあえず走らせて見よう。

 4セル使用に変更の為、別電源や配線のやり直しをして走行準備完了。
 今回の初走行、やはり予想通り?全く上手く走らない、ニコラスも認めた様で
 これを一からセットし直すのは時間の無駄、直ぐに私が用意した2号車に転換
 メカを積み替え、まずはベーシックセットから再開、まだまだ完全ではないが、
 それなりに走行出来る。まずはコース、そしてワンウエイ車に慣れる事と同時に
 ベースのセットのテストをしていこう。今回は十分に時間がある為に焦らずに
 じっくりと進めていこう。まずはボディ、そしてメカの配置による重量バランス、
 スプリング等のテストをすると同時にモーターの初期データ取りも行う。今回は
 バッテリーは、GP、及びH−Energyの4300を用意、IBに比べると少し
 初期パワーは落ちるが、安定した性能と容量で上手くモーターを合わせば、
 アドバンテージが取れる筈、その為に私は専属でテスト、調整が出来る田中君
 にモーター部門をお願いした。

 今日はセッティングという程の事はまだ何もやっていないが、フィーリング等は
 少しわかり方向が少し見えて来た。明日はウエイトバランスやダンパーを重点に
 テストをして見よう。

 ニコラスはさかんに皆のタイム、そして自分のタイムを気にしている。確かに遅い。
 それは当たり前の事、周りの早いドライバー達はもう何年もこのコースで走行し
 経験を積んでいる。いきなり来たものがそれより速く走れる方が不思議だ。
 今はタイムよりも、いかに上手く自分にあったセットが出来る様にするか、そして
 このコースをノーミスで走行出来るように練習をする事!

 今日の夕食は? 中華料理が良いです。 了解!

 6月19日(火) 練習2日目
 今日もニコラスは朝食をパス。そのかわりコンビニにて2Lの水と私の一週間分
 位のパンを買ってコースへ向う。
 
 今日は、まず最初の一回は昨日のままで走行させ、コースの状態を観察。
 殆ど同じ状態で、グリップも悪く無い。

 ここでアンプをノバック製から、KO製に交換しメカの殆どの位置を変えで重量
 バランスを取る。リア部が少し軽く感じる為に、バッテリーは最後部、そして
 モーターの後ろにアンプを配置。何となく私の好きな感じになって来た。

 重量位置がほぼ決まった為に、モーターテストや本格的なセッティングに取り
 かかる。モーターは毎回田中君が色々な仕様をテストしてくれるがまだ車の
 セットも決まらず。走行も5分間ノーミス走行が出来ない事が多く、的確な
 データーが取れない。

 まずは例によってリアからセットを始める。ニコラスは、車はアンダーですが...
 分かってる! ただ、今フロントを触るとたとえ曲がる様になっても、リアがついて
 こなくなり、車の限界が低くなる。とにかくリア部の良い所をみつかるのが先決。
 スプリング、ダンパー位置等を変化させ走行させる。走行後、感想は?
 アンダーです。 そんな事分かってる! リアーの変化はどうだったのか?を
 聞いているの...。
 どうしてフロントのトラクションを全部塗らずに、半分にするのですか? 全部
 塗れば、もっと曲がるのでは? これはねえ〜、セッティングの最初は全てに
 余裕を持たせる為にわざと半分にして、何とかこれでセットが出せれば、後で
 多くも少なくも出来るからね。
 
 今はまず後ろのデーターを取りたい。色々な組み合わせでほぼデータが取れた。
 アンダー病であまりうるさいので、じゃ〜一度トラクションを全塗りにしてやる。
 たぶん走れないと思うよ。

 全塗りで走行、見るからに曲がる、しかしただ曲がるだけ...とてもコントロール
 出来ない、挙句の果てにクラッシュ...だから言わないこっちゃ無い、リアが
 しっかりしていないと車をただ曲げるとこの様な結果になる。分かった?

 じゃこれからフロントに取り掛かろう、リアはグリップの違う3種類を選定、グリップ
 の中間に固定してフロントに取り掛かる。まずはフロントのアーム角を変える。
 これは、リーディレースの時に曲がり過ぎる為にに、アームの角度(逆ハの字)を
 強くしていた、これを標準に戻す。少し曲がる様になると思う、またフィーリングが
 変わると思うので、それを見極める様に...。

 スタート、見るからに車が曲がる、ちょっと曲がり過ぎの感じ、操縦を終わって、
 ニコラスは、ちょっと曲がり過ぎです。そうだね曲がりのフィーリングも良くない。
 コーナーで失速してしまう。次はダンパーを一つ寝かせて見よう。

 これは、コーナーリングは非常に綺麗でスムーズ、私好みのフィーリングだ。
 ニコラスはもう少し曲がって欲しいと...。 OK今日の所は、このあたりにして
 置こう。明日はもう少し細かい所を煮詰めて行こう。そして今ならモーターの
 データーも少し取れるだろう。

 後片付けをしながらニコラスは、明日はちょっと走りこみをしてみたいのですが、
 出来れば1時間に3回位...ダメ! まだ車が完全にセット出来ていない、
 そして明日はセットの一番大事な所だ、セットが決まっていない車でいくら
 走りこんでもあまり意味が無い、車を壊してしまうかも知れない。明日一日
 やれば、かなりのセットは出来ると思う。モーター、バッテリーのデータ取りの重要
 だ。明日予定通り上手く事が運べば、明後日に走りこみをしよう。分かった?
 ハイ! 
 今日は日本食だよ! OKです。

 6月20日(水) 練習3日目
 
 もう3日目となると生活?のペースもつかめてくる。10時15分ホテル出発、
 コンビニに立ち寄り、コースへ...これが日課となる。

 今日はフロント部を中心にもう少し曲がる様にセットをする。最初は昨日の
 ままで走行し、確認をした上で、まずは少し気になっていた、Iアーム位置を
 変更する。(内側を高く)これで少し曲がる様になる筈、走行するとかなり良い
 感じとなった。ニコラスも気に入った様子、ラップもようやく少し上がって来た。
 じゃーもう少し上げてみよう。しかしこれはちょっとやり過ぎ、時としてハイサイドを
 起こしてしまう。やはり前の方が良さそう。コーナーの曲がりもスムーズ、良い感じ
 となって来た。私はこのくらいが良いと思うがニコラスはもっと曲げたい...と

 じゃ試しにスプリングをテストをしよう、硬いスプリングにするか、ダンパーを
 立てるか? まずは簡単なダンパー位置を変更する。少し曲がる様になったが
 あまりフィーリングが良くない。次にもう一つ硬いスプリングにして見よう。
 ところが、ニコラスから要望があり、柔らかいスプリングを試してみたい...
 自分がテストをした時はもう一つ柔らかい方が、良く曲がった様に思えるとの事 そんな筈は無いと思うが、一度試して見よう。
 走行させると確かに車は曲がる、しかしこれは、フロントがグリップをしているの
 では無く、フロント部のロールが大きく、リアーがリフト寸前で、リアのグリップが
 無くなり曲がる様になったと思えた。また少し路面グリップが上がれば、
 ハイサイドにつながる為に、私は賛成出来ない。しかしこのスプリングの
 フィーリングは良さそうなので、これでダンパーを立てればよい結果が出そうな
 気がする。

 試してみると、やはり今まででは一番いい感じに思えた、ニコラスはもう少し
 曲げたいというが、私は暫くはこのままで走行させてドライブに慣れれば、もう
 少し曲げるセットを試みて見よう。今のセットでは、ニコラスの安定しないタイヤ
 製作やトラクション管理で、少しでも曲がり過ぎたらもうコントロール出来なく
 なってしまう。現状の車で上手くコントロール出来れば、かなり良いタイムを
 出せると思う。

 ところで、走行中に良くタイヤが剥がれてしまうけれど、接着する時に、ホイルや
 タイヤの接着面をクリーナーで拭いているの? 何ですかそれは? えっ?
 知らなかったの?? ホイールやタイヤには剥離剤が残っている事が多く、
 このままでは上手く接着が出来ず、走行中に剥がれてしまう事も多い。
 それでですか?度々タイヤが剥がれてしまうのは... そうです!!

 走行もすこしづつ様になって来たが、まだまだミスが出る、車も凡その所まで
 セット出来たために明日は、予定通り走行練習をしよう。車はあまり触らずに
 タイヤの時間管理に重点を置いて、コース攻略を試みて見よう。

 今回のレースでは、アドバンテージは無いけれど、かなりの接戦したタイム争い
 になる事が予想される。決勝レースは無く、予選のベストラップで決まる為に
 たった一回でもミスをすれば、それが命取りになると思う。確実なドライビング
 テクニックを要求されるレースとなるだろう。

 明日は、ちょっと忙しいよ!

 夜、10時過ぎ私の部屋を激しくノックする音が、どうしたの? ニコラスが
 おびえた顔で僕の部屋へ来て下さい。何事か?とびっくりしてして部屋へ行くと
 窓際のカーテンに一匹のトンボが止まっている。これって、怖いの? ハイ
 見た事の無いへんな虫です。へやの外で怯えている。これはねえ、トンボ?
 英語でなんと言うのだっけ? バタフライは蝶々だし...トンボ! 大丈夫
 何もしないから、と捕まえて外へ逃がしてやった。

 6月21日(木) 練習4日目
 日に日に、有力ドライバーも増え、雰囲気も盛り上がって来る。ニコラスも
 かなりのプレッシャーを感じている様だ。今日は予定通り、一日練習に費やす
 車のセットは一切しない。上手く走っても走らなくても、そのまま走り続ける。
 現在のセットは完璧とは云えないが自己採点では80点位の所にあると思う。
 
 とにかく今日は出来る限り多く走り、コースそして車に慣れる事、ニコラスは
 20分に一度走らせたいという、勿論私達は大丈夫だが、タイヤ係りのニコラス
 が付いて行けないだろう。たぶん今の君のタイヤの準備では、30分が限度だと
 思う。モーターは田中君が毎回メンテしてくれる。バッテリーは勿論私、ニコラス  はタイヤのみ用意すれば良い。

 いざ、練習を始めるとタイヤが来ない、何してんの? トラクションを塗ってます。
 あのね〜君、タイヤのトラクションには時間が掛かるだろ? 一回の走行が
 終わってから準備しているようでは、とても間に合わないでしょ。走行前に次の
 タイヤの準備をしておかなければ、とても回数は走れないよ。どの作業に何分
 かかり、トラクションを塗って何分置く等...きっちりしたタイムスケジュールを
 作り、スタート時間から逆算して作業をしなければダメ!

 今のままででは1時間に一回走行出来るのがやっと。我々は暇〜...
 OK、タイヤの最後の仕上げは私がやる、下準備だけをすれば良い。スタートは
 30分に一度、ただし走行に要する時間は約10分、従って作業時間は20分
 しか無いよ。

 かくして、30分インターバルで練習が始まるがどうしてもニコラス部で少しづつ
 遅れて行く、タイヤは新品、2度目、3度目、ニコラスが自由に選べば良い。
 車のセットは同じだから、違いがはっきりと分かる筈。またタイヤのトラクション等
 はすべてニコラスにお任せ、自分なりに色々と情報を集めて試行錯誤をして
 いる。まあ他車に比べてもグリップに差ほどの差は無い為に良いだろう。

 練習が進むにつれ、少しづつラップタイムも上がって来た。かなりワンウエイ走行
 にも慣れて来た様だ。少しアンダーなセットだけれど、うまくコントロール出来る
 様になって来た。かなり私の好きなフィーリングだ、これをコントロール出来れば
 安全に速く走れる様になると思う。
 
 走行、タイヤ作りと忙しいニコラスは後半、少し疲れが出てきたのか?ミスが
 目立つ。しかし着実にタイムを上げてきている。今日の所は、まずは当落線上
 ギリギリの所かな?

 明日は、午前中に車をフルメンテして、もう少し細かい部分をセットして見よう。
 走行回数も少し減らし、モーターやバッテリーのデータも取る。たぶんもう少し
 ラップタイムも上げられ、私の感覚で15、6番手位までは持って行きたい。

 6月22日(金) 練習5日目
 今日は朝から雨、コースはどうなるのかな? 時としてグリップが悪くなったり
 良くなったりする。今日は予定通りまずはフルメンテをして、細かいセットを
 詰める予定。すぐに車のメンテに取り掛かる。ニコラスはタイヤを準備しておく
 様に。1回目の走行は13:00にしよう。今回は結構大きなクラッシュもあった
 が、幸運にもどこも車の破損は無く、まだ一度も修理はしていない。初日から
 今まで、セッティング以外は何もしていない。車をバラして点検をするが、どこも
 痛んでいない。ベルトのみ交換してあとはそのまま掃除だけをして組み立てる。

 今日はモーターやバッテリーのパワー関係も重点的に行う。
 12時45分、ニコラス、タイヤは? すみません、ちょっと遅れてしまいました。
 あのねえ〜レースは時間との戦いだよ。しっかりと時間を守れなければ、失格
 だよ! はい、あの〜 モーターの配線が付いていない様ですが...?
 えっ? あっそう〜 ごめんごめん、お互い様だね。(笑)

 メンテ修了後、最初の走行、きれいなスタート...と思った途端1周目で
 ピットイン、デフがすべってます! しまった、やってしまった。 デフのメンテ後は
 すこし滑らせた方がいいんだよ。なんて言い訳してる。

 走行を開始すると、とてつもなく曲がる。ハイサイドを起こす、これは大変だ。
 路面グリップが非常に高く、フロントがグリップしすぎて、ロールが大きくなり
 ハイサイドを起こしてしまう。

 対策としては、まずはタイヤでやってみよう。トラクションの塗り幅を少なくして
 トライ、少しは良くなったがロールが大きく、シケインや切り替えしが遅い、しかし
 ラップタイムは速い、でも今のニコラスには危険なセットだ。フロントのスプリング
 を少し硬くする。ロールは少なくなったが、少しオーバー気味だ。これをコント
 ロール出来れば、速いのだけれどまだまだラップタイムが安定しない。もう少し
 アンダーなセットにしなければ、ノーミスで走れない。アンダーにするとラップが
 出ない。この矛盾の妥協点を見つけなければならない。ニコラスとの共同作業
 でトラクション剤の塗り幅や時間で試行錯誤する。同時にモーター、バッテリー  のデーターを取る、田中君の今までのテストでほぼモーターのデーターも取れ、
 飛び切り速いわけではないが、対等に戦えるだけのスピードと十分な走行時間 は確保してくれた。もう少しスピードを上げても時間は問題なさそう。

 日を追うごとにニコラスは自分のタイムを上げてはきているが、さすがにこの
 メンバー達も速い。ただノーミスで走れれば、12、3番手位までいける様な感じ
 の所まできたが、これがまた難しい。すぐに好きなお皿の上に乗ってしまう。
 
 叱ると落ち込んでしまうので、やんわりと、あのね、このコースはパイロンに乗って  はダメなんだよ、一度パイロンにのると、0、2秒位ロスをしてしまうよ。これを5回
 繰り返せば、何秒ロスするか計算出来るね?はい良く分かっているんですが..
 それはね、君が下手なんだからだよ。 とやさしく教えてやった。

 走行を見ている人から、ニコラスがミスをしても怒らないんですか?なんて質問
 された事があったが、怒って直るものなら、いくらでも怒りますが、これは本人も
 良く分かっている事だから怒りません。ただやんわりとグサっと突き刺してやり、
 自分の未熟さを自覚させます。これが一番こたえる様です。(笑)

 私は出来るだけ褒め無い様にしているが、これまで着実にタイムを上げて来て
 いる所は評価出来る。もう一歩頑張れば、トップドライバー達のすぐ後ろまで
 付く事が出来ると思う。

 夕食時、とかく周りばかりを気にし過ぎるニコラスに1時間以上もコンコンと
 説教?した。今の我々の状況は、とてもトップを狙える状況には無い。
 周りを気にするより、今はどうすればもっと良い状況になるのか? を良く考え
 速いドライバー達と何が違うのか?をもっと研究をしろ。そして頭を使え。
 今ここで練習した所で、どれだけ上手くなるのか? 練習は帰ってから
 ゆっくりとすれば良い、今は自分の持っている実力をどれだけ引き出せるか?
 が問題で、結果が出た所が自分の今の実力だと思いなさい。

 私は、誰でも上手く走れる車を作る事もセッティングをする事も出来ない。
 ただ、本当にドライバーの性格や好みが分かれば、それに合わせた車を作る
 事は可能だと思う。私の今までの経験と勘で、ニコラスをもっと良く知れば、良い
 車を作る事が出来ると思う。ただ私のポリシーとして絶対に他の後を追わない。
 遠回りしてでも我が道を行き、そして皆の前へ出る。これが私のやり方、また
 これで多くの勝利を得て来た。これが私のやり方。今回だって人が絶対に
 やらないだろうと思うことが一杯ある。でも結果的には、ほぼ対等に走行出来て
 いる。今はこれらがたいしてアドバンテージになっていないが、必ず後にこれらが
 大きな武器になると信じている。

 6月23日(土) 練習6日目(最終日)

 さて今日はいよいよ練習最終日、最後の仕上げの時、外を見ると快晴。
 これは路面が変わるぞ...嬉しい予感。今日は珍しくニコラスは朝食を取る
 という。しか〜し予定の7:30彼の姿は無し。やっぱりな、出発時間の8時
 まだ彼は来ないこれは寝ている。フロントより彼の部屋へ電話、すみません!
 寝坊しました。15分待って下さい。やれやれ、やはりこのところの練習で相当
 疲れているのだろう。練習でも後半になると、走りに疲れが見えてくる。
 このあたりはまだまだ訓練が必要だ。

 ここまで、ほぼ予定とおり順調に進んできた。車もニコラス好みでは無いが、
 私の考える理想にかなり近づいた。今日はもう大きなセットはせずに、微調整
 と車に慣れる事に専念し、数多く走らずに早々に切り上げ、て彼にゆっくりと
 休養を取らせる事にした。

 彼は、昨日私に誰かの入れ知恵か、また隣の柿が赤く見えたのか、ハード
 シャーシの方が良いのではないですか?という。私は、君は何がハードで何が
 ソフトなのか?分かっているのか? そしてそれを試した事があるのか?

 私は今まで数百台の車を作り、何千ものレースを経験してきた。そしてその
 経験から選んだシャーシなんだよこれは。お互いの特性もある程度分かる。
 今のニコラスにはこれが一番良く、そしてこのコースにもマッチングすると思って
 いる。勿論これらをテストする事は重要だが、今はダメ、すべてが一からのやり直 しになる。それには時間が無さ過ぎる。今日は一切何もしない。私は今の段階
 では、完全ではないけれど、車のレベルはトップクラスにある。そしてモーターの
 パワー、スピードも田中君の采配で決してひけを取っていない。走行時間も全く 問題無い。6分近く走行出来る余裕を持っている。3分から4分のラップで最終 ラップを走破出来る筈。後は君のドライブ次第...分かった?

 皆の走行が始まると、やはり昨日の超グリップが嘘のよう...。皆殆どラップが
 出ない。ニコラスが今日はグリップが良くない様です。でも僕の車はハイサイドを
 起こしてしまうかも...君ねえ〜どうして何でもそう早く決め付けてしまうの?
 常に頭の中は真っ白にして、テストをしなければいけないよ。私はそうは思わ
 無い。むしろアンダーになると思うよ。皆の車を良くみてごらん、曲がっていない
 だろでも一回目は、大事を取ってトラクションを、ニコラスは40%、私も40%
 にしよう。 これは、ニコラスが下地剤を準備、わたしがそのあとトラクション剤を
 塗り、二人のコンビネーションでフロントグリップを決めるようにしてきた。
 かなりの微調整が出来る様になった。

 第一コーナー、2コーナーを曲がった所で、すでに車の状態を把握していなけれ ばダメ、そしてその時の状態であとのコーナーを微調整するのだ。

 一回目の走行、序盤、昨日と殆ど変わらないラップで走行する、後半少し
 アンダーでラップを落とすが、この路面ではかなり良い記録。
 操縦台を降りてきた、ニコラスは狐につままれた様な顔で、どうしてですか?
 結構速かったのではないですか? そう昨日のハイグリップと殆ど変わらないよ。
 これがわたしの求める究極のセッティングなんだよ。勿論まだまだ完全では無い が、かなり近づいたと思う、この急激な路面の変化のお陰で、それが実証出来 ただろ? 今日はもう車のセットはしない、まだやれる事はあるが、続けると混乱
 するだけで、たいして益にはならない。それよりこの車に慣れる事、そして路面に
 合わせたトラクション剤の調整を勉強しよう。今までフロントは殆ど半分で調整 を行ってきたお陰で、路面に合わせ増やす事も減らす事も出来る。路面の
 読みを間違えなければ、どんな路面にも対応出来る筈だ。

 今日まで、路面の変化にもかかわらず最初から日に日に着実にタイムを更新
 してきている。これは大きく車を変化させなかった為に、ニコラスが車に慣れて
 来た事もあると思う。私の感覚では最初と大きな変化は無いが、ニコラスはもう アンダーだとは言わなくなった。またドライブで車を少し曲げられる様になった。

 ニコラスは、常に私にこんな時マサミはどうしたの? どう考えたの? って聞く。
 勿論私は、嘘も含めて少しオーバーに言ってやる。一番説得力のある方法だ。 マサミは、夜どんな遅くても決して遅刻した事はないよ! はい、すみません。 
 
 もし、今この車をマサミが走らせれば、たぶん君より0.3秒以上速く走らせると
 思うよ、そうすれば今回の誰よりも速いと思うよ、と、吹っかけてやった。
 そうでしょうね? と妙に納得するところが可愛い!

 今日は、1時間毎に一回、計6回で走行を打ち切る。一回一回レースの
 つもりで、走行する事、そしてタイヤの管理はすべて自分でやる事、私は一切
 口を出さない。そしてお互い自分の領域にしっかりと責任を持ち、人の領域を
 荒らさない事、君は一切車を見る事も触る必要も無い。

 今回、私は君の好きなキャンバーゲージも最初の組立に一度使用しただけで
 その後は一度も使っていない。しかし50パック以上走行した中で、一度でも
 左右が狂っていた事があったか? 何もしていなかった訳では無いよ。これでも
 毎回目視して、クラッシュの後などでは微調整をしていたんだ。

 ニコラスもリーディ氏のサポートを受けたいたので、良く知っていると思うが、氏は
 殆ど測定機を使用しない。しかし的確な判断、調整が出来る。これがいわゆる
 職人技と言われる事なんだ。私もこれを目指している。何でも機械で出来る
 なら、お金持ちが一番速くなる筈だよ。

 ようやく、ニコラスもあまり周りを気にしなく、自分の世界に入ることが出来る様に
 なって来た。これもまたまだ完全では無いが、パイロン乗りも少なくなり、ノーミス
 で完走出来る回数も増えて来た。

 午後5時、最後の仕上げの走行、ニコラスはもう少しやりたそうだったが、私は
 これ以上続けても進展は見られず、またこの時間帯になると、多くのドライバー
 が集中し、大変危険な状態になる為に、早々に打ち切り引き上げる事とした。

 今のニコラスに必要な事は練習より休養だ。

 夕食を取りながら、今日までの復習、そしてこれまでの経過は私の想像より
 上手く行った事を伝えた。勿論、明日は路面も含めどんな結果になるかは、
 分からない。しかし今日までで十分に良い成果を挙げる事が出来たと思う。
 そしてまずは隅っこながら、トップドライバー達と同じ土俵に上がれたと思う。
 明日は、気負わずにリラックスして、自分のレースをやれば良い。結果は気に
 しなくて良いよ。

 明日は遅刻しない様に!すみません、明日モーニングコールして貰えますか?
 OK、了解!

 6月24日(日) 予選レース日
 結果は?
 今年の我々の全日本選手権挑戦は、早くも一回戦退廃となってしまった。

 今日は、モーニングコールにて定刻6時に出発。開場と同時にピット確保に
 急ぐ。今回は参加者も少なく、広いスペースが使用出来楽だ。
 ニコラスはいつに無く緊張している。かなりのプレッシャーを感じている様子。
 大丈夫だよ、君はまだ何も背負っている訳では無い。ワークスと行ってもまだ
 見習いなのだから、気楽にやれば良いよ。

 今日は、残念ながらあまり天気は良くなく、路面グリップは一昨日の様に
 なりそうという事、現状の我々には、どちらかと云うと、少しグリップが落ちた方が
 全体のレベルが下がりやりやすい。レベルが上がるほど我々には不利となる。
 不慣れなニコラスには、限界を超えてしまう。

 今回は最初に1ラウンド練習があり、その後5ラウンドの予選のみのベストタイム
 で順位が決まる。選考会の為、決勝レースは行われない。S・エキスパートは、
 参加は42名、しかしみんなつわもの揃いだ。このレースに参加しなければ
 いけない事が不思議な選手も多くいる。

 まずは、一回目の練習の準備を始めていると。新たな情報が...今回は
 コントロールタイヤを使用する。3セットまでは使用出来る。通常は練習は
 自由となるのだが、ここでは練習からコントロールタイヤを使用しなければ、
 ならないということだ。ここでもやはり新品タイヤの方が良い為に、これを練習で
 使用すると、レースで新品を使用出来る回数が2回となってしまう。

 私はニコラスに、たぶん頭の良い選手は、練習は殆ど走らないと思うよ。
 そしてタイヤを温存するよ。そうですか? どうすれば良いですか。それは君が
 決めれば良いが、走行して車の調子が分かれば、それ以上走行する必要は
 ないと思うが、もし慣れの為に走りたければ最後まで走っても良いと思う。
 我々はまだそんな作戦を使用するレベルでは無いが、これは覚えて置く様に。

 練習走行が開始され、やはり某チームの選手は少ししか走行しない。
 中には全く練習をキャンセルする選手もいる。さすがだ...結果はともあれ
 これらの作戦は非常に大切だよ。はい!僕も少しで走行を止め、タイヤを
 温存します。OK、良い心がけだ。
 
 練習走行は、予定通りトリムの調整やフィーリングの観察で、4周程で走行
 終了。車の状態は? ??あまり良く分かりません! あのねえ〜これは
 車や路面の状態を見るためにテスト走行をするのだよ。タイヤの事ばかり気に
 してたのでは? こんな時はもっと走ってもいいんだよ。

 今日はグリップが良さそうで、少し間違うとハイサイドを起こす危険がある。
 一回目は、トラクション剤を少なくしていってみよう。

 予選第1ラウンド、相当緊張している。かなり危険な状態だ、TITCや、
 REEDY RACE の方が気楽にやっていた。何とか気分をほぐしてやろうと
 思うが、良い言葉が見つからない。
 
 第1ラウンドがスタート。1周目インフィールドに入りシケインでいきなり宙を舞う。
 ああ、やっぱり。もうこうなるとリカバリーが出来ない、まだまだ若い。
 その後はまずまずのラップで走行するが、小さなミスが出る。結果は見るまでも
 無い。勿論私は何も言わない。彼はかなり落ちこんでピットに帰って来た。

 こんな時かける言葉は無い。次の作戦は? トラクションを変えてみます。
 グリップをし過ぎて、ハイサイドが起きそうで怖い。こちらの方が少しグリップが
 低いので安心です。OKじゃそれで言ってみよう。

 第2ラウンド、かなり慎重な走りだが車はあまり安定は良くないがそれなりに
 走行させている。あまり速くは無いがまあまあといった所、このまま行けばデッド
 ラインは行くだろう...がやはり終盤いつも悪い癖、パイロン暗礁。
 この激戦の中では、一回のミスは命取り。 これは非常にまずい展開。

 この様な状態は尾を引く、私自身もあまりこの様な状況は経験が無い為に、
 どう対処すればよいのか?分からない。何とか流れを変えなければ。これはもう
 車のセッティング等の問題では無い。精神との戦いである。

 私は、ちょっとギャンブルだがここで少しセットを変えて見ようと提案した。
 3ラウンドからは、これまでの成績により組み合わせが変わる。ここで気分を
 一新して新しい流れを作ろう。しかしニコラスは、今までは自分のミスで車は
 操縦は少し難しいが悪くない。ラップタイムも出せる。もう一度このままで挑戦
 したいという。分かった、じゃ^もう一度このまま言って見よう。

 3ラウンド、かなりのプレッシャーか相当押さえて走行させているのが良く分かる
 ラップも速くないが、無難にこなしている。今回初めてノーミスでレースを終えた。
 しかし、余りにも消極的過ぎたのかタイムは良くない。皆のレベルが高い中では
 このタイムでは20位には入れない。現状で2秒程足らない。

 もう後が無い、私はニコラスにもうここまできたらしょうがない、思い切って
 ギャンブルに出る。そして私は決めた、たとえ今回の予選を通過しても、本戦
 はキャンセルする、現状からすると今の我々の力ではこれが限界で、この後も
 本戦までに、もう練習やテストをする機会は殆ど無い。今回の選手以外に
 まだ、10名のシード選手、そして海外選手がいる中で、健闘出来る見込みは
 は無い、もう一度振り出しに戻り、トレーニングを積んで、またチャンスがあれば
 来年に挑戦しよう。
 だからもう何も考えず、思い切って行け! ハイサイド防止の為、Iアーム位置
 を変更する。たぶん少しはましになると思う。

 4ラウンド、ニコラスは吹っ切れたのか? 今までとは見違える様な走行を開始
 中盤にトップに立ち、かなりの好ラップで走行を続ける。やっとニコラスが蘇った。
 このままゴーるすれば、当確ラインを超えそう。しかし最終ラップでまたもや
 クラッシュ3秒のロス、これが命とりとなった。
 でも、やっと遅ればせながら、”らしさ”が出てきた事を褒めた。

 最終ラウンド、もうすでに我々の予選は終わったのだから気楽に行きなさい。
 気分的にも楽になったのか、かなり良い感じで走行するが、ここでもやはりミス
 を起こし、タイム更新は出来ず。レースは終了。

 どんな顔をして操縦台を降りてくるか? 私は笑顔で迎えてやった。
 すみません! ミスばかりをして...いいよ!
 
 残念だけれど、とても良い勉強が出来たし、大きな課題も出来た。また1から
 やり直し、いつかここで雪辱を果たそう。この悔しさを忘れてはいけない。

 負け惜しみじゃないけれど、これで良かったのかも知れない。中途半端な成績
 で残るより、すっきりとしていいじゃないか?
 今回の結果でよりトレーニングに磨きが掛かると思うよ。来月からまた新しい
 練習をしよう。次はどこのレースに挑戦しようかな?

 6月25日(月) ニコラス帰国

 今日はもう帰国、早かった様な長かった様な一週間だった。彼のフライトは
 11時30分、朝7時30分ホテルを出て空港は向う。いつも事だが特に今日は
 言葉が少ない、かなりショックを受けたのだろう。私は昔我々がマサミと始めて
 全日本選手権に挑戦した時の事を彼に話した。関西では殆ど敵無しでお山
 の大将だった我々が、初めてワークスの凄さを目にして驚いた事、そして自分達
 の力の未熟さを実感した事。しかしその時の屈辱が後の我々のパワーとなった。
 
 それから初チャンピオン獲得まで4年間かかった。勿論、今とは全く状況は違う
 が、ニコラスも少し自身を過信している所がある。自分が上手いと思った所で
 もう進歩は止まってしまう。世界中には上手なドライバーが一杯いる。

 常にチャレンジャーでなければいけない。そしてもっともっと練習をしなければ
 ダメ! これまで、TITC、REEDYレース、そして今回と3回のレースを行って
 来た。これで今の自分の実力がはっきりと分かったと思う。勿論、私はニコラスの
 良い所も十分に認めている、だからこうして一緒にやっているんだ。

 スタートして約半年、かなりお互いが分かってきた所だと思う。これから2ヶ月は
 ニコラスも学校が忙しく遠くへは行けない為、私がシンガポールへ行く。そして
 これからもう一度基礎練習からやり直し。

 明日から、昨日私が話した練習を毎日続ける事! はい、良く分かりました。
 もっともっと練習をします! 来月、よろしくお願いします。

 ニコラスは笑顔で搭乗口に向った。  See you soon!