廣坂 物語


 廣坂 正明 及び 正美 の生い立ち、歴史を記録します。

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   Vol−30

  オフロード世界選手権 オーストラリア  9月4〜10日

 全日本選手権が終了して4日後8月24日世界選手権の為にオーストラリア
 に向って出発した。
 今回は世界選手権では、オフでは始めて自分で手がけたマシンで世界に挑戦
 すると言う事で、一年前より谷田部アリーナの前身であるテストコースに毎朝
 就業前にテストを行い開発を続けて来た。そして全日本選手権でデビューし
 好成績を上げる事が出来、かなりの自信を持って臨む事が出来た。

 しかしレースの難しさを分かってきた私は、今回の世界選手権を勝つ為には、
 大きな3つの課題、目標を持った。
 
 まず、一つはコースに合ったマシンを作る事と、いつもレースでは一番問題が
 ある、良いタイヤを見つける(作る)事。これは一年間の研究、及びテストにて
 ある程度の良い感触を得る事が出来た。

 マシンは、従来のスーパードッグファイターの改造だが、駆動系、及び足周り
 をほぼ一新した。特に重視したのは駆動系の軽さ、そして軽量化だった。
 これはライバルであるシュマッカーCATに対して、従来車では大きく劣って
 いる所だった。

 そしてCATの短所とも言えるギャップの悪さ、これは私はショートアーム、そして
 ユニバーサル、ダンパーに問題があると考えていた。その為に、この部分を特に
 強化して、戦闘力をつける事を考えた。アームは出来る限り長く設計した。
 当然、成型等が出来ない為に、フライス加工で製作した。そして駆動も従来
 はM3ピッチのベルトを使用していたが、これもCATと同じM2を使用した。

 メインシャーシも細く軽量して、従来には無かったアッパーデッキで強化した。
 そして全幅を細くする為に、バッテリーを左右変則的に、4−2に配置して
 幅を大変細くする事が出来た。

 ダンパーも、アソシエイテッドが非常に良いコーティングをした、新しいものを
 開発した為に、これを使用させて貰う事とした。

 タイヤに関しては正美が担当し、多くのタイヤをテストし、また自らも製作して
 かなり良い感触のタイヤも出来た様だ。

 そして二番目は、私の助手を持つ事だった。今までは私はほぼ正美一人の
 メカニックをすれば良かったが、今回からは外国選手も含め多くの選手を
 サポートしなければならない。まして今回のマシンはプロトタイプで海外選手
 には現地で配布する事となる。私一人ではどうにもならない。

 また、私も40歳を過ぎ体力的にも峠を越えて来た、特に記憶力の衰えを
 感じて来た。レースでも度々簡単なミスをして正美の足を引っ張る事も多く
 なって来た。その為に、従来より私達の家族の様にしてきた、京都在住の
 渡辺君に私の助手として同行して貰う事とした。彼は勿論ドライバーとしても
 優秀だが何よりも気心が知れて、正美そして私にも遠慮無しに文句が言える
 人間だった。

 レース中は常に私と一緒にいて、私の行動を一部始終監視をしている。整備
 等は殆ど私がするのだが、間違いや忘れが無いか?をチェックする。このレース
 でも重大なミスを何度が発見してくれた。もし彼が居なかったらマシントラブルで
 リタイアしていたかも知れない。

 リーディ氏にも大変可愛がられて、私達はいつも”ナベ”と呼んでいたが、リーディ
 氏は”ナビ”としか言えなかった。

 そして3番目は、正美自身のサポートだった。殆ど連勝を続ける正美だが、
 従来にもまして周囲の期待も大きくなり、また正美にかかるプレッシャーも大変
 なもので、大きなレース前になると、家でも喋らなくなり食事も十分に取らなく
 なる。いつも心配していたママが今回は私が行って、皆の食事を作ると同行
 する事となった。 幸い現地の近くには日本食のマーケットもあり、食材には
 困らない。

 今回は、20日近い滞在となる。事前に20kgの米も現地へ送った。そして
 昨年のオフ全日本選手権でのアソシ勢との”歓談”等で正美以上に有名と
 なり、多くの選手の親が、ビールを持ってママの所へ”挨拶”に来た。
 一番人気だったかもしれない。

 勿論、毎日3食普段と変わらない食事で。昼にはチーム員全員におにぎり等
 作って貢献してくれた。コースにはほとんど顔を出す事は無かった。これが私達
 が長い日程の中誰よりも元気で働けた要因となったのは言うまでも無い。

 そして勿論マネージャーは文三さん。もうこの頃にはすっかりと我々もファミリーと
 なり、チームの団結力は何処にも負けない凄いチームが出来ていた。

 こうして、この3つの課題を果たす事によって、前代未聞の2WD、4WDの
 両クラス、TQ、そして優勝、また世界選手権4連勝、全クラスチャンピオンを
 獲得の偉業を成し遂げられた。


















    

    

    

    

    

    

    

    

    

    





    

    

    

    

  

  

  






   
   

  

  










  

  

 



  

  






   

  





   

   
   
   
   

   

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    

    


   
  


   
   


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